最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)832号 判決 1960年11月01日
武蔵野市吉祥寺二〇八三番地
上告人
大竹クリーニング株式会社
右代表者代表取締役
箕輪一郎
右訴訟代理人弁護士
中条政好
東京都千代田区霞ケ関一丁目一番地
被上告人
国
右代表者法務大臣
小島徹三
右当事者間の法人税確認請求事件について、東京高等裁判所が昭和三三年七月五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。
よつて当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中条政好の上告理由について。
昭和二九年四月二一日以降同年一二月三一日までの事業年度分につき、上告会社の所得金額を四〇万四、〇〇〇円と、その法人税額を一六万九、六〇八円とした武蔵野税務署長の決定に対し、法定期間内に審査請求の申立のなかつたことは、上告会社の主張自体により疑がない。この事実によれば、右決定は確定し、それ自体に存する重大かつ明白なる瑕疵のため無効である場合は格別、然らざる限り右決定の所得金額及び法人税額は、動かし得ないものとなつて居ること明白である。而して、右決定に、前述の無効とすべき事由を認め得ない以上、上告会社の所論年度分の現実所得額が、右決定の所得額に達しなかつたため、実質的には、本来税金となるべきでない金額をも徴収せられる結果となるとの理由のみを以つてしては、右決定を無効となし得ない。したがつて上告会社は、右決定の法人税額に相当する金額の納税義務を負担するものとせねばならない。されば以上と同旨に出た原判決に所論の違法はない。論旨は採用し得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)
(参考)
○昭和三三年(オ)第八三二号
上告人 大竹クリーニング株式会社
被上告人 国
上告代理人中条政好の上告理由
一、当社に対する昭和二九年四月二一日より同年一二月三一日に至るこの事業年度分法人税に関し当期の所得金額四〇万四、〇〇〇円税額金一六万九、六八〇拾円とする税金債務不存在確認請求訴訟につき行政事件訴訟特例法第二条に依り取消を求むる抗告訴訟にするべきであると為し棄却の判決を為したる原裁判は次に述べる法令違背があり且不服につき破毀を求め更に所得の有無につき裁判を求めようとするものである。
二、原裁判の法令違反
(1) 原裁判は行政事件訴訟特例法第一条の公法上の権利関係に関する訴訟並同法第二条及法人税法第三七条第一項「処分の取消を求むる訴」に関する解釈と其の適用を誤つている。
(2) 上告人が主張した課税標準違反の有無は職権調査事項であり此の負担は小規模企業者にとり重大であるは勿論更正処分であるため実質的には税金でない金額を徴収せらるることになるのでこれは重大である。
原判決は畢竟更正処分の違法並其の重大性の解釈を誤るものである。
以上